元祖亘理のはらこめし
はらこをよく水洗いするのも肝心です。
秋が待ち遠しい
ふるさとの味
まだ秋には遠い8月、どこかの川にサケが遡上してきた、という話を聞くと、亘理町民はどこかそわそわ。「もうすぐはらこめしの季節」そんな期待にいてもたってもいられなくなるのです。亘理町内の飲食店や旅館などで「はらこめし」が味わえるようになるのは、9月初旬くらいから。町内の各家庭でも、その頃から「はらこめし」が食卓に登場します。地元の人にとって「はらこめし」は、外食で味わうものではなく家庭で楽しむものとして定着しています。※はらこめしは、9月中旬~11月下旬の期間が旬になります。
作り方には「炊き込み」と「おかまぜ」の2種類があります。写真は「おかまぜ」。
「亘理のお母さん」
が作る絶品
はらこめし
はらこめしを飲食店などで出す場合、そのほとんどは「炊き込み」という方法。炊飯器にお米を入れ、そこにサケの身を煮た汁を足して、はじめから味付けごはんとして炊きます。このほか亘理では古くから「おかまぜ」という作り方もあります。ご飯は通常通り炊き、炊きあがった白いご飯に、少しずつ煮汁を入れ、味付けしていくという方法です。どちらもおいしいことに変わりはありませんが、微妙な味の違いがあり、時折、亘理では「どっちがうめえ」論争が勃発するとかしないとか。
イクラも身と同じ煮汁でさっと味付けします。
煮る、炊く、
のせる…うまいっ!
醤油、酒、砂糖で特製のたれを作ったら、少し煮立て、サケの身を煮ます。またイクラも、同じ煮汁にさっと通します。サケの身を煮た旨味のあるだし汁で炊いたご飯に、先ほどのサケとイクラをのせれば、はらこめしの完成! 亘理のベテラン主婦だと、思いのほか短時間で作ってしまうのに驚かされます。残った煮汁は捨てずに継ぎ足し継ぎ足しで使う家庭もあります。それだけみなさん「我が家」の味にこだわりを持っているからこそ「やっぱりおらいの『はらこめし』がいちばんうめっちゃ!」となるわけです。
絶品はらこめしを作ってくれたのは、亘理町食生活改善推進員のお母さんたちです。
伊達政宗も
はらこめしに
惚れた?
はらこめしが世に広まったきっかけが伊達政宗にある、という説があります。江戸時代、貞山堀の工事臨検に亘理へやってきた政宗。地元の漁民たちがはらこめしを献上したところ、ことのほか喜び、帰ってから側近などにそのおいしさを吹聴したと言い伝えられています。今でいう「クチコミ」です。この政宗効果から次第に有名になり、はらこめしは亘理のご当地グルメとして認知されるようになっていったということです。明治時代には荒浜の飲食店で提供されるようになったはらこめし。今や全国にその名を知られるまでに成長しましたが、それでも旧来と同じように親から子へ、各家庭の伝統の味は着実に受け継がれています。